医療法人志匠会
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※日本整形外科学会より画像引用
頚椎の病気には、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアなどがあります。いずれも加齢変化が関わっているため、誰でも発症する可能性のある病気です。
頚椎症の骨棘(変性した骨のとげ)や、椎間板ヘルニアなどによって、頚部脊髄が圧迫されて症状が出たものを頚髄症、脊髄圧迫症状はなく脊髄から分岐する神経根の圧迫症状のみのものを頚部神経根症といいます。神経根を圧迫するものが、加齢変化による骨棘を伴うものを頚椎症性神経根症といい、左右どちらかの首から肩甲部、腕、手指の神経痛、しびれなどを生じます。時に腕や手の麻痺、筋萎縮を伴うことがあり、この場合は頚椎症性筋萎縮症とも言われます。
脊髄圧迫による頚髄症の治療では、保存的治療で効果がなければ、椎弓形成術や前方除圧固定術がスタンダードです。一方、頚椎症性神経根症の場合は、保存的治療でも3か月で60〜90%の患者さんがほぼ治癒することから、一般的に手術治療の対象とされていないのが現状です。しかし、通院しても治らない一部の患者さんは、整形外科や脳神経外科、神経内科、ペインクリニック、というようにドクターショッピングを繰り返したり、鍼灸院、整体、カイロプラクティックに通ったりと苦労されています。
保存的治療が多くの方で有効な疾患ですが、痛みやしびれによって眠れない、仕事や家事ができない、という重症の患者さんに、「3か月は保存的治療で経過観察しましょう」と言うのは気の毒です。中には痛くてあおむけになれず、MRIすら撮影できない患者さんもいます。また前述のように、保存的治療では痛みが改善しない人や、痛みがとれてもしびれが強く残る人もあります。あるいは一旦症状が改善した後、運動や仕事などによって症状が再発することもよくあります。
これらの、
① 重症患者さん
② 保存的治療では効果不十分な患者さん
③ 再発を繰り返す患者さん
には、手術治療という選択肢もあります。
また特殊な症状として、神経根症によって上肢の筋肉の麻痺を生じることがあります。腕が挙がらなくなったり、手に力が入らなくなって指が伸びなくなったりします。この場合、痛みやしびれが軽度のことも多いです。麻痺した筋肉は、筋萎縮を生じて細くなってきますので、なるべく早期に手術を行って、神経根を圧迫から開放する方が良いと思われます。
頚椎症性神経根症に対する術式は、前方除圧固定術を施行する病院が多いですが、新横浜スパインクリニックでは頸椎人工椎間板置換術という特殊な術式も採用しています。
①右斜め前から見た頸の椎間孔の画像
②輪切り(水平方向)から見た頸の椎間孔の画像
頚椎症性神経根症患者さんの頚椎CT画像。①の画像は頚椎を右斜め前から見たもので、直ぐ上の椎間孔と比較すると赤丸の中の椎間孔が著しく狭窄しているのが分かる。②の画像では、赤矢印の部位に骨棘が張り出し、青矢印で示した椎間孔を狭くしている。
志匠会では、頚椎症性神経根症や頚椎椎間板ヘルニア(外側型)に対して、短期入院の低侵襲手術、顕微鏡下頚椎前方椎間孔拡大術(Microsurgical anterior cervical Foraminotomy:MacF)を行っています。
MacFはインプラント不要で神経根の通り道を拡げる手技であり、侵襲が比較的少なくなるため、短期入院となる場合がほとんどです。
椎間孔拡大術には前方アプローチと後方アプローチがありますが、前方から手術する施設は極めてまれです。後方椎間孔拡大術は、神経根前方からの圧迫に対して神経根後方の椎間孔壁を削って圧を逃がすという間接的な減圧になり、神経根を圧迫している骨棘やヘルニアを除去することは困難です。志匠会では、神経根を圧迫している骨棘やヘルニアをダイレクトに除去・除圧できるというメリットから、顕微鏡下頚椎前方椎間孔拡大術(MacF:マックF)を採用しています。